《MUMEI》
気遣い
「ちょっと待ってて」

公園に着くなり、真鍋は僕をベンチに一人残して、どこかへ行った。






「ココアとお茶、どっちがいい?」

暫くしてから真鍋は、飲み物を両手に持って戻って来た。

「…あ、じゃあ…ココアで」

「やっぱ女の子は甘いもん好きだよな」

子供みたいな笑みを浮かべた真鍋が、僕にココアを手渡した。

「ありがとうございます…」

「どういたしまして」



僕を女だと思ってるから…?
なんなんだ…こいつの偽善者っぷりは…。



腹立つ腹立つ腹立つ腹立つ腹立つ腹立つ腹立つ腹立つ腹立つ腹立つ腹立つ腹立つ腹立つ腹立つ腹立つ腹立つ!!!!




「そういえば…なんて呼んだらいいかな?」

「…あ、眞季って呼んでください」

「眞季ちゃんね、じゃあ…改めてよろしくお願いします!」

そう言いながら、真鍋は頭を下げた。
いきなりの行動に驚いていると、真鍋がチラッと僕を見上げた。

「とか言って。堅かった?」

そして笑いながら缶の蓋を開け、一口お茶を飲んでから大きく息を吐くと、真面目な顔で遠くを見つめた。

「眞季ちゃんさ…俺の噂…聞いたことない?」

「…噂……?」

真鍋に言われて、三上たちの言葉を思い出した。

「陽菜ちゃんの友達だから眞季ちゃんも、そうゆう噂とかくだらないって思うのかな…」

「先輩が人気あるのは知ってます」

「ははっ……そっか」

真鍋は少し、寂しそうに笑った。

「人気ある…なんて自惚れていいのかな…俺さ、バスケしかなかったんだ…いろいろ噂されてるみたいだけど…付き合うのなんて、陽菜ちゃんが初めてでさ……陽菜ちゃんの噂は聞いたことある?」

“援交女”三上たちの言葉を、思い出す。
それから、佐野さんの言葉…。



──先輩たちにも人気あるんだよ。



けど、僕は……



「知りません」

そう答えた。

「そっか…。陽菜ちゃんは有名なんだよ、俺らの学年でも可愛い子が入ってきたとか言って…入学式のときから噂になってた」

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