《MUMEI》
嫌われた理由
 「ごめんな…」
 「え…どうして…」
 「じゃあな…」  
 「待って!海斗ぉ――!!」

 事の始まりは、昨日の放課後。
 いつも通り、海斗と帰ろうと思ったら、
「別れよう」
 と急に別れ話を出された。理由は教えてくれなかった。ただ、
「ごめん」
 とだけ言って別れた。

 その出来事を姫香に話した。
「えー!!何ソレ最低ー!!」
「もう私、どうしたらいいのか分かんないよ…」
「うーん…」
「……うくっ…」
「ちょ、泣かないで!何か理由があるんだよ!ね!」
「ありがと…でも…」
「何なら、俺が聞いてみようか?」
「梨斗!」
 梨斗…福田梨斗(フクダリト)は、同じクラスの友達。
「え、梨斗、それ本当にいいの?」
「まぁべつにいいけど?面白そうだし。」
「…!!ありがとう梨斗!」

 ある休み時間
「…んで、海斗なんて言ってた?」
「なんか…嫌いになったから別れた、とか言ってたぞ。」
「そんな…」
「何か伝えようか?」
「あ…じゃあ、何で嫌いになったのか、って聞いてくれる?」
「あぁ、分かった。」
「ありがとね、梨斗。」
「いえいえ」
 梨斗は七瀬に背を向けたまま、右手をヒラヒラと振って教室を出て行った。

「あ、おかえり梨斗。」
「おぅ、聞いてきたぞ…」
「なんて…言ってたの?」
 少しいつもより暗い顔をしている梨斗に、不安げに聞いてみた。
「…そんなのどうでもいいだろ、いちいち聞くな、だってさ。」
「え…そんな…」
 胸が痛んだ。苦しくて、悲しくて涙があふれてきた。
「どう…して…」
「んな顔すんなよ、元気出せ。」
「ん…ありがと…」
 梨斗は励ましてくれたけど、私の心の傷は、今も癒えていない。

 ――あれこれと事が進み、夏休みがやってきた。

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