《MUMEI》
言い知れぬ不安
おかしくなりたくない、そう思っているのに頭から爪先まで、電流が走ったみたいに痺れて、頭が回らなくなっていく。
『もう、やめて』そう言いたいのに、言葉が上手く出ない。




それどころか……

眞季が望んでいる反応を、している気がする…。


「どうしたの?陽菜…」

そんな私を見透かしたように、ニヤニヤと笑いながら問い掛ける眞季に堪えられず、私は感覚を遮断する為に体に力を入れた。

「言いたいことがあるならちゃんと言ってごらん?」

“やめて”そう言いたいけど口を開いてしまったら、また可笑しな声が出そうで口を開けなかった。

「陽菜、悪い子だね……気持ちいいくせに、なんで気持ちいいって言わないの?」

「き、気持ちよくなんか…な…い…」

やっと言葉を出せたと思ったのに、眞季は小さく笑うと、

「ねぇ?僕もう耐えられないよ、 陽菜…」

と言った。
『耐えられないってなに?』
聞きたいのに、また言葉が出ない。

「小学校のときから陽菜だけをずっと見てきたんだよ?いつも見守ってたんだよ?僕は陽菜の全てを知ってるんだ」

全てを知ってるわけない…。
私の苦しみなんて、眞季にはわからない…。

「それ…どういう意味?僕、本当に全部知ってるんだよ?まぁ… 処女だと思ってたのは僕の勘違いだけど…。でもわかるで しょ?」

首を振って否定する私に、同意を求める眞季の言葉に言い知れぬ不安を感じた。

「な、に言って…の?」

「いつも同じことしかしてないから…。だから、処女だと思ってた…何人もの男相手にしてるのに、いつも同じことしかしてないし…僕は、てっきり陽菜が僕の為に処女を守ってるのかと思ってたよ」

声を振り絞って聞いたのに眞季は、より一層私の不安を煽る。

「でも僕は陽菜に期待しすぎてたのかなぁ?……もしかして、誰にも見られてないと思ってた?」

そう言いながら眞季が、機械のスイッチを切った。
スイッチが切られ、 刺激から解放された筈なのに、震えが止まらない。

「なにを…見てたの?」

眞季は私の質問に答えずに、私の頭を撫でると私の携帯を手に取った。

「ねぇッ!!なにを見たのよッ!!」

脈の動きが、どんどん加速する。

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