《MUMEI》
わからない
陽菜が褒められてる。


子供の頃から陽菜は、みんなに好かれていて…僕は、そんな陽菜を誇りに思ってた。

だから真鍋の言葉は嬉しい筈なのに…なんだろう…なんでこんなに……───



「眞季ちゃんさ…一目惚れってしたことある?」

「…え?」

真鍋が言わんとしてることが、わからない。
だから僕は、反応に困った。

「一目惚れとか馬鹿みたいだよな…」

そう言いながら苦笑する真鍋の言葉は、陽菜に一目惚れした僕を否定してるみたいで、腹が立った。

「そんなことないです」

だから僕は否定してやった。
“馬鹿”だと言う、真鍋の“一目惚れ”に対しての価値観を。
なのに真鍋は、嬉しそうに笑って僕を見た。

「ありがとう」

ありがとう…?
……なんで?

「俺さ、自分に自信なくて…だから勉強頑張ったんだ、自分に自信持ちたくてさ…でも楽しくないんだ」

コイツは僕を置いて、いつまで自分語りを続ける気なんだろう。
そう思ったけど、何故か僕は真鍋の話を聞いていた。

「勉強に集中してても、なんか…満たされないんだよな…で、そんなときにバスケに出会ってさ、すっげー気持ち良かったんだ」

オマエの“満たされないもの”なんて、たかが知れてるだろ。

「これだ!って思ったね、その日からバスケばっかになったんだ、そしたらいつの間にか女子に話し掛けられる機会が多くなった…」

真鍋は少し暗い顔で、ちょっとだけ俯いた。
バスケの話をしてたときは、楽しそうだったのに…真鍋の表情はころころ変わる。

「一目惚れしました、とか言ってくれる女子もいたんだよ…でも俺にはそれが理解できなかった、一目惚れってなに?俺のなにを知ってんの?とか思ってさ…性格悪いよな」

“自信ない”とか言いながら、“俺モテるんです”って言ってるように感じて、腹が立った。
僕は真鍋がなにを言っても、許せないんだろう…。





自信がない…?

あんなに陽菜は、オマエの為に耐えてるのに?

会いたいと思われてるのに?



オマエなんかに、僕の気持ちはわからない。
何年も見てきた大切な人を、何も知らない男に取られる気持ちなんて…

オマエみたいな奴には、わからない。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫