《MUMEI》
本題
「もっと中身を見て欲しかったんだ…って言っても俺に中身なんかないのかも知れないけど」

僕の苛立ちなんかに気付くこともなく、真鍋は話を続ける。

「一目惚れしましたなんて言っても劣等感ばかりで情けない俺のこと知ったら、すぐに嫌になるに決まってる…だから一目惚れなんて信用できなかった」

そう寂しそうにする真鍋は、学校で見る真鍋とは別人みたいだった。

「なのに俺は陽菜ちゃんに一目惚れしたんだ…一目惚れなんて信用できないとか思ってたくせに」

真鍋が小さく笑った。

「罰当たったかなぁ…今まで俺に一目惚れしましたって言ってきてくれた子たちも、こんな感じだったのかなぁ…てか、一目惚れなんて信用できないとか思ってたなら、もっとちゃんと陽菜ちゃんを見てあげたら良かったのかもなぁ…」

苦しそうな顔で、そう言ってから真鍋は無理矢理作ったような笑顔で、僕を見た。

「なんか、ごめん…いきなりこんな話されても困るよな、眞季ちゃん黙って聞いてくれるから、つい…」

「…先輩は……陽菜になんて言われたんですか?」

僕は肝心な質問をした。
陽菜が真鍋に、なんて言ったのか。
ちゃんと真鍋を突き放したのか、僕の存在を話したのか……。






それによっては、僕の考えも変わる。





「陽菜ちゃんは…俺が知りたいことは何も教えてくれなかったよ…だから諦め切れなくて…」

コイツが簡単に、人を信用するような馬鹿で良かった。

「…陽菜には……秘密があるんです」

「……秘密…って?」

真鍋が、緊張した表情で聞いた。

「陽菜も、ずっと言えなくて悩んでたと思うんです…先輩、私が言ったこと誰にも言わないって約束してくれますか?」

「もちろん」

「陽菜にも言わないって約束してください」

「…わかった」

少し悩んだふうだったけど、僕の目を真っ直ぐ見ながら、そう言った真鍋の言葉は、力強く感じた。

「じゃあ、先輩を信じますね」

真鍋が頷いたのを確認してから、僕はゆっくり話し出した。
話に真実味を出す為に。

「陽菜は先輩が好きですよ、他に男なんていません」

真鍋の表情が明るくなった。
緩んだ口元は、嬉しさを抑え切れなかったんだろう。

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