《MUMEI》
始まりは、絵の具。
放課後の図書室で
俺はちょうど今読み終えたばかりの小説を静かに閉じた。

うん、と
同じ体制を取り続けて固まった肩や腰を労るように伸ばし、少し深いため息をつく。



小説のなかに出てくる主人公は、決まってどいつもこいつも、特質したナニかを持っている。


例えば、何かしらの特別な能力を所持し、それらを駆使して悪しきを倒したり...

勇敢な精神を振りかざし
虫が湧くように、次々訪れる問題を打開したり。

頭がよかったり、心が読めたり、美しかったりエトセトラ。

そう。忙しなく進行する彼らの世界は現実ではあり得ないことばかり。


あり得ないからこそ、俺は小説を好む。

幸せな生活を送る自分への、普通すぎる生活に添える香辛料の代わりとして本を読む。


端から見たら、多分俺は大分暗い奴だろう。
自覚はある。

平凡な顔つきに、平凡な性格。
高身長ではあるが、俺のこの容姿からはなんのプラス条件にもならない。



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