《MUMEI》
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私は渡されたノートから顔を上げた。
「…お姉ちゃんの願望がだいぶ出てるね…」
私は正直な感想を言った。
「ぅ、うるさいな…」
自分から感想を求めたのに姉は不機嫌そうにそっぽを向いている。
「鴒と由って言うのは、そのままお姉ちゃんとセンパイだよね」
「…まぁ、そうだね」
「で、私がセンパイの妹になってる、と…
…この『梢』っていうのは誰?」
「梢はボクの現実を投影したキャラクターだよ
鴒はどちらかというと理想って感じかな」
「…なるほど」
確かに姉では『鴒』のような元気なキャラにはならないだろう。
「…あと、私はシスコンでも百合でも無いのですが」
「え?
翼(たすく)って鴒(りょう)のこと好きじゃなかったっけ?」
「……センパイのことが好きなのはお姉ちゃんでしょうに」
「よく一緒に買い物行ったり、登下校してるじゃん」
「それはお姉ちゃんも一緒でしょう?」
「ぅ…」
「ま、お姉ちゃんがセンパイのことがどのくらい好きかは、このノートでよくわかったけど」

ノートを読んで少し混乱しているので軽く現実を確認しよう。
私は天野 翼(あまの たすく)。
高校一年生だ。
先ほどから会話をしている相手は姉こと天野 由(あまの ゆい)。
そして話題に出ているのは、幼馴染みにして私の部活のセンパイ、中村 鴒(なかむら りょう)。
姉とセンパイは私より一つ上で二年生である。
姉はこの三人を題材にあの小説まがいを書いていたようだが…。

「でも、なんでお祭りの前で止まってるの?
キリのいいところまで書けばいいのに」
私は疑問を口にした。
「一応、現実で起きたことをベースに書いてるから…」
「へぇ…
じゃあ今週末のお祭りはセンパイとデート!?」
「ぅ、うん」
「…奥手なお姉ちゃんもついにここまで来たか」
「失礼な」

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