《MUMEI》

ヒトは所詮餌でしかない
奪われてしまったのなら他の餌を探せばいいモノを
何故、これ程までに必死になっているのか
リトル・ファー自身にも解らず、そんな自身に困惑する
「……解らない。でも……」
今この時に解らない事を思案するより、行動に移した方がいいと
前を見据え、リトル・ファーはその場から走り出していた
「待ちなさい。私の可愛いリトル・ファー」
途中、背後から突然に抱きすくめられ
振り返ってみれば其処に、クイン・ローズが居た
進む事を止めさせようとするかの様に強く抱きすくめてくるクイン・ローズ
その腕を振り払おうとリトル・ファーは身じろぐ事をする
ソレを宥めてやるかの様にクイン・ローズは更に強く
その小さな身体を抱きしめてやりながら
「獣に堕ちても、構わないのよ。それで彼が楽になれるのなら」
泣いているのか、僅かに震えが混じる声で呟いた
「……何故、そんな事を言うの?獣に堕ちてしまえば全てを忘れてしまう、パパが、居なくなってしまう!!」
「それでも!ヒトの咎に苛まれ、苦しみ続けるよりマシよ!」
そんな姿を見ているのはも最早耐えられないのだとクイン・ローズ
結局は相いれない互いの想い
これ以上の問答は無駄だと、リトルファーはクイン・ローズの腕を振り払い
また走りだす
ヒトの咎に苛まれるよりは、と
クイン・ローズの言葉が耳に残り、徐に脚を止めた
「ヒトが居なくなれば、全てが終わるって言うの……?」
もし、それしか術がないのだとしたら
「……あの人も、あのヒトの家族も、あのヒトの居た世界も、見捨てるしかないの?」
そうしてしまいたくないと思っている自身に
何故、こんな思いをしなければならないのか、と
もどかしさばかりを感じるリトル・ファーだった……

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