《MUMEI》 黒板に人だかり紙が貼ってあった。 “殺人” 大塚幸太郎の記事のコピーだ。 「なにこれ」 若菜は剥がして棄てた。 「くっだらない! ―――――おはよ、樹。」 樹に向かって笑顔を振り撒く。 「……ああ」 静かに樹も笑い返す。慣れたものなのか、傷付いたそぶりも見せず机の上で黙々と窓の外を眺めている。 アラタは振り向かないように斜めから樹の動向を窺う。想像していたようなことは無かった。 彼が上の空な対応をすると無性に引っ掛かる。 名前を口にしたかった。 誰かの名前だ。 彼の知る化野アラタとは別の架空の意識である。 前へ |次へ |
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