《MUMEI》

それから悠斗に家まで送ってもらった。

(明日、どんな顔して悠斗と話せばいいの?と言うより和輝と会いたくないなー。)

そればかり考えていた。

―翌日―

朝、重たい気分のまま玄関のドアを開けた。

「おーはよ!!リィ。」そこには笑顔の悠斗がいた。

(本当は昨日何で泣いていたのか、何で逃げようとしたのか聞きたいはずなのに・・・悠斗、優しすぎるよ。)

「悠斗、今日は早いね。」私は昨日のこと何てなかったかのように明るく接した。

「何か目覚めが良くて、家にいるのもなんだしってね(笑)」

私は昨日の話をするのが怖かった。それでも隠すのはいけないと思い・・・

「あのね、昨日のことなんだけど・・・」

「あっうん・・・。」

「何で私が泣いていたのか、何で悠斗から逃げようとしたのか・・・。」

「ゆっくりでいいから・・聞くよ。」

「うん。」

「でも大丈夫。それがどんな理由でも俺はリィから離れないから。」

その言葉が救いだった。

「悠斗が居残り練だったから・・・

私は全てを話した。

「そっか・・・。」

「だからね、悠斗以外の人とキスしちゃったから逃げようとしたの。」

「・・・。キスって想い合ってる男女がして初めて『キス』って言うんじゃない?だからそれは『キス』じゃない。

なーんてな(笑)俺、そんなの気にしないよ。今、こうして目の前にリィがいるから。それだけで充分。ちゃんと話してくれてありがとな。」

そうして私の頭をポンポンした。

「・・・して・・・」

「え?」

「どうして怒らないの?」あまりに優しすぎる悠斗に聞いてみた。

「だってリィを信じてるから。」

嬉しくて思い切り悠斗に抱きついた。

「おぃ(笑)いてーよ(笑)」

すると・・・

「何だー、朝からあんまイチャつくなよー。」

和輝だ。

すると悠斗が

「いくら親友でも許されることと許されないことだってある。それくらいバカじゃないんだし分かるだろ?」

悠斗の目は鋭く、声も低く、それだけ真剣だった。

「冗談だ。ちょつとカラかってみただけだよ(笑)マジになんなって、キスしたくらいで・・・

―ドンッ―

悠斗が和輝を殴り倒したのだ。

「やめて、悠斗ーー。」

「何だよ、和輝をかばうのかよ。」

「そうじゃない。悠斗の手が傷ついちゃう・・・。」

和輝が立ち上がって私に

「こんなに人に愛されてる理香が羨ましくなっただけだよ・・・。」

そう言って去って行った。

「悠斗、ありがとう。」

「ごめん、ちょっと頭にきて・・・。」

こんなに愛されてるんだ、と凄く嬉しかった。

ありがとう、悠斗。

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