《MUMEI》 普段は人気の無い神社だが、祭りという非日常の中で、昔の活気を取り戻していた。 …というか、結局私は赤羽先輩のペースに取り込まれている気がする。 私の隣には綿あめを持ってご機嫌な赤羽先輩。 ……悔しいけど…可愛い…。 「…どうしたの、そんな顔して もしかして…楽しくない?」 「いえ…少し考え事をしていただけです 誰かと一緒に来るのは久しぶりなので、楽しいですよ(ニコ」 「…ぁ…ぅ、うん…」 何故か赤くなる赤羽先輩。 それにつられて私も赤くなる。 それから私たちはしばらく無言で歩いた。 それを先に見つけたのは赤羽先輩だった。 「ねぇ、翼ちゃん」 「…なんですか?」 「あそこに居るの…由と中村くん、だよね?」 …本当だ、確かに境内の石段で並んで座っているのは姉とセンパイだった。 「…そうですね」 「ねぇねぇ、もしかしてあの二人、付き合ってるのかな?」 「いや、そういう話は聞きませんね」 まだ姉の片想いの状態のはず。 「ふーん… 文学男女だからお似合いだと思うけどね」 「私も、センパイと姉は噛み合ってると思います ……正直、羨ましいです」 姉達から目を逸らすように私は答えた。 「ふふ…嫉妬?」 「ち、ちがいますっ!」 嫉妬などするものか。 私はただ… 「私はただ…姉とセンパイが……お姉ちゃんと鴒くんが、私の手の届かない所に行ってしまう気がして…」 「…お祭りで女の子が泣きそうになってると、神様だって悲しむよ?」 「え…?」 目元に指をやると僅かに水滴が。 …私は泣いているのだろうか? 茫然としていると赤羽先輩に抱き寄せられた。 「ぁ……あか…ば…せんぱい…」 「大丈夫、翼ちゃんには私がついてるから…」 今は…今だけは、赤羽先輩に甘えていよう。 前へ |次へ |
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