《MUMEI》
新しい希望
母さんは、死んだ。

ストーカーに刺された。

『被害者の羽澄 華世(ハスミ カヨ)さんは病院に搬送されましたが、死亡が確認されました。
 警察の取材に対して、渡 恵吾(ワタリ ケイゴ)容疑者は……息がなくなれば、全て俺のものになると思った、と
 供述しているとのことです。』

5年前、俺の誕生日サプライズをするために、デパートへ出かけた。

『ふふ、ちょーっと待っててねぇー』

満面の笑みで俺に言った。

『すぐ帰ってくるからね』

あの笑顔と言葉が、生前の母さんの最後のものとして、みんなの記憶に残った。


「父さん、再婚すんの?」

「あ、あぁ。 カナタ、嫌か?」

「別に。 それに父さんも、男だしなぁ?」

「彼方、どこでそんな会話を覚えてきたんだ?」

古風な怒り方。

母さんの分まで、俺らが幸せになればいんだろ。

「父さん、俺さ。 ミヤのことが好きだったんだ」

「!? カナタ、それって近親相姦…」

「いや、違う。 昨日バッサリふられたから」

「カナタ…泣け。 男泣きだ、遠慮すんな」

「…ック」

「実はさ、奥さんのお腹、子供いるんだ」

「!」

「新しい希望、見つけろ」

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