《MUMEI》 8/27…絶句してしまった。 先輩があんな文章を書くなんて知らなかった。 と言うか…信じてはいないけど、だいぶ飛んでたな…。 語り手は狂ってたようにしか見えなかったし。 そのまま、しばらく読み進めていると扉が開く音がした。 「…っ!」 私は勢い良く扉を振り返った。 「…どうしたんだい?」 「……いや、なんでもないよ」 山田だった。 「おや? ……赤羽先輩の作品を読んだのかい?」 「…うん」 私の手元を見て笑う。 「主人公の狂った感じが結構好みなんだよね」 「…なんかあの小説、創作物に見えないんだけど」 「確かに、経験談って感じはするね」 「だったら怖くない?」 「さすがに経験者だとしたら、自分の罪を書いたりしないさ」 「そうかな… だとしたら、姉妹っていうのは?」 「…赤羽先輩には昔、妹がいたらしい」 それは初耳だ。 「…昔ってどういうこと?」 「…通り魔に刺されて死んじゃったんだって」 それから先の先輩についての話は衝撃的だった。 中学時代にはもう天涯孤独の身だったなんて…。 いや、独り暮らしなのは知ってたけど…。 「…本当なの?」 「天野先輩に訊けば判ると思うけど、本当だよ」 語り終えた山田は神妙な表情で頷いた。 私は、先輩とこれからどう接すればいいか、判らなかった。 前へ |次へ |
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