《MUMEI》
創文部
「人が死んでたって?んなわけねーじゃん」
瑛斗の目の前に座る、長身でお調子者そうな男子生徒、織坂 秦(おりさか しん)が言う。
「いや、ホントだって。それで、ゾンビみたいな化け物が...」
「瑛斗、そんなに机運びが嫌だったの?」
と言って冷たい視線を投げかけるのはショートカットでパッチリとした二重のまぶたをしていて平均的な体型をした、学年でも一、二を争う美少女と噂される初瀬 杏梨(はつせ あんり)だ。
「嘘つくならもう少しマシな嘘をつくんだな。そんなことがあったら、学校中が大騒ぎになるだろ?」
と男っぽい口調だが、実は女子である水城 玲奈(みずき れな)が冷静に言う。
女子にしては170と長身でスマートな美人系で、茶色い髪を後ろで一つに縛っている。
「...みんな怖くないの?瑛斗の怪談話」
と一人だけ違う反応を見せるのは桐乃 星架(きりの せいか)。
小柄だが、物凄い運動神経を持ってる活発で明るい少女だ。
髪は肩にギリギリかかるくらいのセミロングで艶のある。
この5人は城北高校、創作文化部、略して創文部のメンバーである。
「怪談じゃなくてホントだって!ノンフィクション!」
「って言われてもなぁ」
ポリポリと織坂が後頭部を掻く。
「証拠もないし...」
「というか、屋上いた女子生徒って誰だ?」
水城が尋ねた。
「あっ、名前聞き忘れた」
今頃になって瑛斗はそのことに気付いた。
「そこまでちゃんと考えないとかないと誰も信じられないよ」
と首を振りながら桐乃は呆れた表情をする。
「だーかーらー!」
「あーうるせえ!!今日はもう解散だ」
水城はそう言って、鞄を手に取ると部室を出て行った。
「なんなんだよ...」
「最近、水城っちゃん機嫌悪いよなぁ」
とあまり気にしてないかのように織坂が言った。
「先週の部長会議でなんかあったみたいだよ」
初瀬が答える。
「ふぅーん」
「星架〜もうちょいリアクションとろうよ」
「って言われてもねえ」
「俺らも帰ろうぜ。水城も帰っちまったし」
瑛斗の言葉で本日の創文部はお開きとなった。

ー次の日ー
学校は自殺事件の話など一切なく、時間が過ぎていた。
(昨日のは夢だったのか...)
お昼を食べたあとのすぐの授業であるため、ものすごくウトウトした状態で昨日の出来事について考える。
だが、やはりあれが夢だったとは思えない。
ならば、あの化け物は?
様々な疑問が心の中で渦を巻くがいくら考えてもなに一つ分からず、気が付けばその日の授業は終わっていた。
「瑛斗っ!部活行こ」
バシッ
と瑛斗の背中を叩きながら、クラスが同じである初瀬が言う。
「ちょっと寄るところがあるから、先に行っててくれ」
瑛斗は咄嗟にそう答えていた。
「そう?じゃ先に行ってるね」
そう言って、初瀬は駆けて行く。
瑛斗はその背中を見送った後、昨日生徒が飛び降りたと思われる、3階の空き教室へと向かった。
そこに、昨日の女子生徒がいると思ったのだ。
目的の教室に到着し、扉に手を掛ける。
鍵は...かかっていない。
瑛斗は扉を勢いよく開いた。
そこで瑛斗は

窓から人が飛び降りるのを見た

「なっ!?」
瑛斗は急いで窓に駆け寄り、下を見る。
そこには、昨日と全く同じように、死体が倒れていた。
キャーっとその死体の近くで悲鳴が上がる。
同時に、後ろから
「何してるのっ!」
と声が聞こえた。
瑛斗は振り返る。
そこにいたのは紛れもなく昨日の女子生徒だった。
・・・
2人は屋上へと移動していた。
「どういうことだ?」
俺は何か知っているであろう女子生徒に問い掛ける。
「...知りたい?」
女子生徒は試すような目で尋ねた。
「ああ」
「じゃあ、教えてあげる。と言いたいとこだけどまだ話せないわ」
「なんで!?」
「一つだけ言えることは{昨日のは偽物で今回見たのは本物}だということ。ふふ、それじゃあね」
女子生徒はそれだけ言って去って行こうとする。
なぜかそれを、俺は止められなかった。

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