《MUMEI》 茫洋として、イシユミは起き上がる。 藍色をした印象の夢を見た。連想からか、斑藍の鉱石に視線を向ける。 「あれの毒気に、やられたかな」 ひどく、身体が重い。あれほど、軽かったのに。 灰色原石の中に見える斑な藍の模様は、濁りが消えて鮮やかな群青色になっていた。要因は不明だが、純粋度が上がって、禍々しく輝いていたのである。 イシユミは引き寄せられるように石へと近づいた。 鉱石の変貌に、指を伸ばそうとするが、直前で思い止まる。 触れることを躊躇わせる奇妙な警鐘を感じたのだ。 何の夢を見たのだろう。 大事なことを示唆されたような気はするのだが、覚えているのは、鉱石と同じ藍色だけであった。 昨夜は、タカイチと寝床に入った。 時折、下宿にやってくる山師と夕食を食べて、一日あった何でもない出来事や噂話などをする。 寝入る前に、斑藍の話もしたので影響したのであろうか。 彼の姿は、すでにない。 朝一番に仕事があると言っていたので、仕度をして出たのだろう。 昨日遅くに、宿へと滅多にない大勢の採掘人たちが到着したのである。 一区切りがつくまでは、当分忙しくなる。しばらくは、本業よりも宿の仕事が優先されるに違いない。 イシユミは、斑藍の石を残して下宿を出た。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |