《MUMEI》
クリスマスA
先輩はシャツのボタンを恥ずかしいそうに留めた。

目を絶対そらしてる。

「先輩?」

ボタンを留める手が細かく震え、上手くはめられてない。

宗一の視点
指が震えて、ボタンが…。
体が火照るのが分かる。
それを森永が見てると考えるだけで、余計に焦る。

「留めましょうか?」

そういって手早く有無を言わせないよう森永がボタンを留める。

「あれっ?先輩…またですか?」

そう言われて驚く。

ただ、ボタンに触れられただけで、感じてしまう。

シャツから透けて目立ってしまってる。

「ここじゃダメなんですか?」

「駄目だ!帰る」

恥ずかしい。きっと俺はそんな顔をしてしまう。
なるべく早く帰りたくて。

「先輩待って」

森永がコートの袖を掴む。

「何だよ」

「せっかくのクリスマスなんですから…こっち見てください」

「ん?」

公園にイルミネーションが灯っていた。

「綺麗ですね」

「あぁ」

森永は引っ張ってた手を俺の指に絡ませた。

「ここ、外なんだから」
「暗いから見えないですよ。それに…街はみんな恋人同士ですから気にならないです」

「寒いですね」
「あぁ」
森永がギュッと手を握る。
こんなときに、握り返せたらどんなに楽なんだろうな。

握り返しはしない。

けど離しはしない。

微妙な距離。

「先輩の手、暖かいなー」森永が笑った。

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