《MUMEI》
二通目 from…
それから3日経った。
俺は毎日のようにあの公園のベンチに訪れ、手紙の返事を確認している。
返事は、いまだに無い。
まぁ特に気にすることはない。あの手紙だって何日間放置されていたかわからないのだから。
家を出て、今日も確認をしに行く。
その際に妹と目が合う。妹は睨みつけ、視線を逸らした。曰く、兄が引きこもりだなんて、恥ずかしくてしょうがない、らしい。
冷めたもんだ。昔はお兄ちゃんお兄ちゃんと可愛かった…………わけではなかったかもしれない。そう思うと昔からこんな態度だったかもしれなかった。
自然公園への道のりはそんなに悪くない。距離はそこまで遠くないし、俺は自然に触れ合うのは好きだから、自然公園に訪れるのは苦ではない。
ただ、たった一つ嫌だと思うことと言えば、自然公園までの道のりが、俺が通っていた学校の通学路ってことだ。
何人か顔を知っている生徒が通り過ぎる。俺は頭を下げ、黒のパーカーのフードを被り、猫背のまま歩く。
頼む。俺に気付くな。
それだけを思った。
幸い気付くことなく通り過ぎた。だが、その時、思いがけない人が通り過ぎた。
後ろ姿でもわかる。幼なじみの女だ。ひとり、見知らぬ女子を連れている。
幼なじみは振り向き、こちらを見た。
目が合ってしまった。
動揺していると、怪訝に思った女子は知り合い?と幼なじみに尋ねた。幼なじみは首を横に振り、知らない人、と言い、幼なじみは逃げるように走って行ってしまった。
…………なんだこれ。
なんていうか、これ…………不幸だ。
俺はまた、走り出した。
何で俺がこんな目に遭わなきゃならないんだ?
俺が何をしたって言うんだ?
あのベンチに、近付く。例の音が、聞こえる。
2日間、俺が近付いても、開いても鳴らなかったオルゴールが、キレイな音を奏でている。
自然と緩む涙腺を堪え、下唇を噛んだ。
皮肉だ。
今日は返事があると、直感的に思った。
何もこんな目に遭った日に返してくるなんて。
3日前と同様に、大きく息を吐きながらドカッとベンチに座る。
息を整える。
幼なじみが俺を知らない振りをした理由はわかっている。誰だって引きこもりと…………下手すれば不審者と思われたかもしれない。そんな奴と知り合いだなんて思われたくないだろう。妹と同じ思考だ。
だから諦めがついたと言えば…………割り切れる。割り切らなければならない。
オルゴールは鳴り続ける。
蓋を開けると、オルゴールは奏でるのを止める。
手紙を取り出す。
開くと、返事は書いてあった。
弱々しく、悲しげに震えた文字が。


―――ご返事、ありがとうございます
質問なのですが、私は幸せでは、ないです。
私は、両親を失いました。

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