《MUMEI》

朝起きて、まず最初に始めたのがオルゴール探しだった。
まだ引っ越しをしたわけじゃないけど、昨日は祖父母の家に泊まった。
身の回りのものはまだ整ってないけど、家からオルゴールを持ち出したのは覚えている。それが無い。
あれは大切なもの。いや、今や亡き両親からもらった大切なものから、形見になった。
それを……無くした?
ハッとなる。そうだ。昨日あの公園のベンチに置いていったはずだ。確か手帳のメモ書きに何かを書いたはずだ。


―――あなたは、今、幸せですか?


その一文を思いだし、ゾッとする。
なんて事を書いてるんだ、私は。形見のオルゴールをそこに置いて帰って……私は一体どうしてしまったんだろう。
とりあえず回収しに行かなくては。あれが無くなったら、もう不幸の言葉一つじゃ済まされない。死にたくなる。
5分で身支度を終え、突進するような勢いで家を出た。
学校に行くような時間だけど、今日も休むことにした。担任の先生が無理して来なくてもいいと言ってくれたからだ。
走っていると、学生服を着た男女それぞれこちらをジロジロ見てくる。そりゃそうか。制服着た私が汗かきながら学校とは別方向を走っていたら。
駆ける。早く回収しなきゃ。大切なものを。
あれはもう、私の、命よりも、大切なもの。
走る。走る。走―――


記憶が途絶えた。
気がついたら、知らない天井を見ていた。
何が起きたかわからない。
とりあえず起き上がった。看護士さんのような人が驚いたような顔をして、こちらの体調を聞いてきた。まったくの健康です。
何が起きたか聞いてみた。ここが病院で……事故に遭った?私が?バイクに?2日間……意識が戻らなかった?
なんて言うか、これ…………不幸だ。
しかも、両親のあとを追いに行ったと思われていた、みたいだった。
最悪だ。私はそんなことはするつもりなかったのに。
あの時私がしたかったのは、形見の回収。それだけだったのに。この不幸。
発狂しそうになった。
けど、おばあちゃんが病室に入ってきて、それは諦めた。泣きながら抱きついてきた。
さすがに心配させすぎたみたいで、罪悪感が芽生えた。
でも、今日だけ行かせて下さい。お願いします。すっかり元気になった体で土下座し、私はあの公園に、今度は慎重に歩いていった。
正直なところ、あのオルゴールが残っている可能性は絶望的だ。そう思っていたけど、確認したかった。
公園に着くと、やはり早歩きになる。
池を超えて、あのベンチへ。
あった。

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