《MUMEI》
前から好きだったけど怖くて言えなかった
嘘だ…嘘だ…嘘だ…
頭の中で何度も否定しながら俺は薄暗い廊下を走り続けた。

親友のヒロトが交通事故に合い、病院へ運ばれたと連絡を受けたのは、ついさっき。

目的の場所、それは緊急治療室。扉の前では、ヒロトのお母さんが力なくソファーに腰かけて頭を項垂れている。

『おばさん…アイツは?』

俺の声に丸まった背中がピクリと震え、頭をあげた。

『……あ、ぁぁ、勇くん。来てくれたのね…』

涙目のおばさんの顔に不安が増す。その時、治療中の点灯が消え、扉が開いた。

数人の看護師と共にストレッチャーに横たわるアイツは何本もの管に繋がれ呼吸器を付けられていた。

『ヒ…ヒロト!?』
おばさんは、アイツにすがり付くように名前を叫ぶ。

ピッピッピッピッ…
シューシューシューシュー…
病室に移動したアイツは無機質な機械音に包まれ、固く瞼を閉じている。

『頭を強く打っているようで、まだ何とも言えませんが、このまま意識を取り戻さなければ植物人間になる可能性もあります。』

管だらけのアイツの姿をみながら、医師に告げられた言葉を脳内で繰返し反芻する。

おばさんは入院の手続きの為、ヨロヨロと看護師に付き添われ病室を出ていって、今は俺とコイツだけ。

ベットに近寄り、手を握り締める。が握り返すはずもなく…。不意に恐怖心が芽生える。もしこのままコイツが目を開けなかったら…。

『なぁ…ヒロト。俺な、ずっと前からお前の事…好きだった。…でも、怖くて言えなかったんだ…』

でも、お前を失うかもしれない今の恐怖に比べたら、なんてちっぽけな恐怖なんだ。

『馬鹿だろ?俺?…なぁ、いつもみたいに笑い飛ばしてくれよ…明るい笑顔でさ…なぁ、ヒロト!』

俺の独白は、病室の白い壁に吸い込まれ、無機質な機械音が響き続けているだけだった。



*********


あぁ、なんか暗い展開に。どーしましょうか。お題のセリフ見て、すぐこれを思いつきました。
ズレてたらごめんなさいm(__)m

読んでいただいてありがとうございました。

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