《MUMEI》 入口僕と一緒だ…。 「こんな気持ちになったの初めてだって言ってました…だから陽菜は先輩のこと、ちゃんと大切に想ってます」 怒りで顔が引き攣りそうだった。 陽菜が実際に言ってた言葉…。 陽菜の本当の気持ち…。 それを聞きながら、安心した表情をする真鍋にも、腹が立って仕方ない。 嬉しさを抑え切れなくて、勝手に口元が緩むその気持ちを理解できる分、余計にイライラする。 「そ、そっか…なんだ…じゃあ…」 「でも、陽菜は先輩とは付き合えません」 安心したような、照れたような…、そんな表情で笑う真鍋の言葉を遮った。 真鍋は意味がわからない、といった様子の間抜けな顔で、僕を見た。 「……先輩、これから私と一緒について来てくれませんか?」 込み上げてくる笑いを抑えながら言った。 「え?…いや、…何処に?」 状況を理解しきれていない真鍋を無視して立ち上がると、真鍋は焦ったように僕について来た。 「どうぞ、上がってください」 「…え……?」 僕は自分の家に、真鍋を連れて来た。 真鍋は少し戸惑った様子で、僕と開かれた玄関の扉を交互に見ている。 「見せたいものがあるんです、それを見てもらわなきゃ陽菜が先輩と付き合えない理由、話せないんです」 なかなか入ろうとしない真鍋に、そう言って促すと真鍋は、戸惑いを隠し切れていない表情で何度か頷いてから、小さな声で「お邪魔します」と言いながら、家の中に入っていった。 前へ |次へ |
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