《MUMEI》
12歳
私は藤岡瑞穂。
彼−雪野拓深とは小学生のころ初めて会った。

違う学校だったからあまり話しもしなかったけど。学習塾がおなじだった。

7歳上の姉がバイトしてたから私も半ば強制的に通わされてた。

拓深は明るくて人気があった。話に聞くと空手とサッカーをしてて、勉強も出来て、将来は医者になりたいらしい。

バレンタインには女の子からチョコレートをたくさん貰ってるって。

絵に書いたような王子様。
だから興味は無かった。

私が好きだったのはマンガを読むこと。恋なんか夢の世界だった。

なのに…

好きになっていた。

あれはクリスマス前の最後の塾の日−

「瑞穂ちゃん。私拓深君に告白しようと思うの」
仲良しの麻紀ちゃんが話してきた。
「へぇ〜知らなかった。好きだったんだ。ねぇ付き合ったりするの?」

私は恋がなんたるかもわからず一人興奮し麻紀ちゃんを冷やかした。

照れながら麻紀ちゃんはうれしそうに。

「同じ中学になるから一緒に帰ったり日曜にサッカーの応援行ったりしたいなぁ」
「頑張ってね。麻紀ちゃんかわいいし。昔から塾通ってるし。」

私は盛り上げた。
麻紀ちゃんはかわいらしい子だった。老舗の料亭のお嬢様で大人しくて、いつも笑顔でまるで天使みたいな女の子。

彼女なら拓深に似合う。

そう思ってたんだけど。

「来た!瑞穂ちゃんどうしよう。」

麻紀ちゃんは大きな目をうるませながら私の袖を掴んだ。

「落ち着いてよ。帰りにコクったほうがいいかも。」
「そうね。そうよね。」
私は麻紀ちゃんを座らせてた。なんだかこっちが緊張しちゃってしょうがないよ。
その横を拓深が通りすぎようと。

「藤岡さん。教科書間違えて持って帰ったろ?ほれ」
算数の教科書を渡した。

「えーうそぉー!」

確かに私の本だった。慌ててバッグの中から彼のを出して渡した。

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