《MUMEI》

今時、親の事情をああだこうだと言うような下品な行為は避けたがる。


しかしいつだって物珍しい話は人々に甘美な刺激を与え続けた。
親が幼児暴行殺人、自殺だなんて目の前にそんな御馳走が転がっていたら手に取らないはずは無かった。


ひっそりと地中に潜りながら噂という波が聞こえないように響き合う。






「気味悪くないの」
樹が若菜に言う。


「人を殺したら気味が悪いって誰が決めたの?

私は自分で見たことしか信用してないから!

ね?斎藤君!」

いきなり振られたアラタは樹を一瞥し、瞬間で見た人には分からない程度で微小に頷いた。

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