《MUMEI》
帰り道
颯人の手が私の肩に触れている。
「・・・。」
私に気を使っているのか何もしゃべらないまま送ってくれた。
「ありがとう・・・。来てくれて嬉しかった。」
いつもと違う雰囲気で、なぜか緊張してしまっている。
昼間はうるさいくらいに、話しかけてきたのに今はなんなんだろう。
そんな事を考えていたら、
「・・・なぁ」
急に話しかけられた。
「大丈夫か?」
「あ・・・。うん」
「びっくりした。小春が俺の目の前で・・・泣いたから」
それを聞いたら急に恥ずかしくなった。
それに気がついて、
「でも、分かんないけど嬉しかった。」
颯人も恥ずかしそうに自分の首を触って、少し笑っていた。
私は、それを不思議そうに見ていた。

父と住んでいる家についた。
「ありがとう」
今日で2回目だ。それだけ言って、家に帰ろうと思っていた。
でも、離れたくなかった。
そんな事を思っていながらも、足を家の方に向ける。
颯人を背にして進もうとしたら、急に引っ張られた。と思ったら、私は颯人の大きな体の中にいた。
「離れたくない。」
その短い言葉が1番に私が言いたかった言葉だ。
だから、颯人の大きな体を強く抱いた。
表情は前髪で見えない。
「俺・・・、小春のことが好きだ。」
すぐに、言葉が出なかった。
こうゆう時は、なんて言えばいいんだろう。
そんな事を考えていたら、颯人が
「返事は、明日聞く。」
と言って、走っていってしまった。

告白されたことなんて、何回もある。
でも、この気持ちはなんだろう。

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