《MUMEI》

静まりかえった、部屋

まち子…その女を裸にしろ

………は、はい

突然の、俺の命令

女は、失禁してやがった

和服を脱がせるまち子の手も、震えてた

発狂して、済むと思うなよ
気が狂ったぐらいで、逃れられると思うなよ

女の目は、血走ったままだけど
怯えた目で、俺を何度も見てた

目を、合わせてられないようだ

父は、もう居ない
誰もお前を庇ってはくれないんだぜ

振る舞いだけで、地位を保てるとでも、思ったか?
まち子ぐらいなら、騙せるだろうがよ

父が亡くなり、金で淋しさを埋めたとでも、言い訳してみるか?

ちちの想いすら継がなかったお前を、父は認めんよ、あの世でもな

なんだ、その、無様な身体は
ぶよぶよで、醜い身体
不摂生してるからだ、
親父が愛した身体の面影も、ねーんだろうなぁ
鏡を見せてやれ、まち子…
それが、お前だ、醜い姿を自分で見てみろ

まち子が、姿見を、持ってきた
その、まち子の足取りがもたれてた

見ろ、現実を
ションベン垂れるより、惨めだぜ
たがが外れっぱなしの、末路だ

食べたいだけ、食べ
寝たいだけ、寝て
努力を、忘れ、力に溺れた者の、末路だ

さぁ、掛かってこい
お前に何の武器がある?
女の武器すら錆び付いてよ

叩き潰してくれるわ!、
一瞬でな
掛かって来んかい!!

俺の怒鳴り声に、ぺたんと、漏らした床の上に、へたりこんでた

野に下っても、神谷の名を使い
詐欺紛いの事ぐらいしか出来ないのであろうな
病院に入れるなら、入れろ
アカネ、お前が払うんだ、嫌なら親を捨てろ

母と言う、名の人は、泣き崩れてた

泣くということは、正気なのさ
思い通りに行かなかったのは、お前がバカだからだ
奪いたければ奪え
殺しあいでも構わんぜ、トコトンやってやる
それが、父の嫁だった、お前に対する俺の敬意だ

俺の声が、部屋に響いてたんだ

……………

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