《MUMEI》
再婚
「ただいま」
颯人と一緒にいて、赤くなった顔を見られたくなかったから、少し外で風にあたっていた。
今日は、新しいお母さんと妹はいないようだ。
「飯は?」
父は少し怒たような声だった。
私が帰って来ても、父とそれだけしかしゃべらないこともある。
「食べてきた。」
また、ウソをついた。
父は他に何も言わなかったので、私は自分の部屋に戻ることにした。
それを悟ったのか父が、
「あの男、誰だ」
びっくりした。父が私と颯人のことを見ていたなんて
いや、それ以上に父はそういう事に口出しをしてくるタイプではないと思っていた。
「彼氏なのか?」
「うん」
隠す必要もないから、正直に答えた。
「あっそ」
もう興味をなくしたというように、そっけなく言った。
「あーあと、薫さんと結婚するから」
一瞬間が間が開いてしまった。
薫さんとは、私の新しいお母さんだ。
「今日は、それの用意で家にきてない。」
「そう。」
私もそっけなく言ってやった。
沈黙が流れる。
父は見ていたテレビに目を向けていた。
私は、何も言わずに家を出た。

分かっていたはずなのに、分からなかった。
私は、あの息苦しい家の家族にならなければならない。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫