《MUMEI》 迷い「ま、眞季ちゃんっ…!」 階段を上がろうとする僕を、真鍋が呼び止めた。 「あ…あのさ、こうゆうのって…よくないんじゃないかな…」 「こういうのって、なんですか?」 「いや…相談持ち掛けたのは俺なんだけどさ、眞季ちゃんも女の子だし…」 真鍋が何を言おうとしてるのか、僕にはわからなかった。 「眞季ちゃんは今まで男の人を家に入れたことはあるの?」 男を家に入れたこと…? あるに決まってんだろ。 僕は男なんだから…。 そう思ったけど僕は、 「先輩、真面目なんですね」 そう言って笑った。 「陽菜のこと、知らなくていいんですか?」 「…いや……」 「怖いですか?陽菜の秘密知るの」 「そうじゃないけど…」 「なら、ついて来てください」 困った顔で俯いた真鍋を無視して、階段を上がって行くと、真鍋はついて来た。 結局ついて来るなら余計なこと言わなきゃいいのに…。 でも…少し前の僕も、陽菜に対してそんな感じだったか…。 逆らえなくて、最終的に陽菜の思い通りの行動をするくせに、つまらないことばかり考えて、余計な発言をしたり、不安になってみたり…。 人間って少し立場が変わるだけで、性格も変わるから面白い。 「…ご…ごめ…ん」 結論から言うと、真鍋はそう言った。 爽やかぶったいつもの真鍋の顔は、面白いくらいにひきつっていた。 …── 僕の部屋の前に着き、僕は無言で扉を開いた。 部屋の中は陽菜の匂いが充満していて、ベッドに縛りつけられたままの陽菜は何度も果てて、意識も朦朧としている状態なんだろう。 喘ぎ声というより、啜り泣くような声をあげて、痙攣を繰り返している。 横にいる真鍋を見ると、僕は笑いそうになった。 瞬きもしないで、陽菜の姿を見る真鍋は、僕の期待以上の表情をしていたから。 「驚きましたよね」 「…こ…れ…って…」 固まったままでいる真鍋に聞くと、真鍋は陽菜の姿を見詰めたまま言った。 前へ |次へ |
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