《MUMEI》
温もり
  〜麻子視点〜


私は、先輩の切ない瞳を見つめる。

他に何か用事があったのかな・・・?

私がもう1度どうしたんですかっと

尋ねようとしたところで

先輩が口を開いた。

「あの、俺!

田中のこと好きなんだけど!」

そう言うと

先輩の顔は更に

赤く染まった。


私は、ビックリしすぎて

まばたきするのも

忘れていた。


えっ!!??

何で先輩が・・・?

私を!?


私がパニくっていると

先輩が続ける。

「俺と付き合って欲しい!」


私は、深呼吸をして

出来るだけ落ち着いて返事をする。

「先輩・・・。

ごめんなさい。

私、好きな「知ってるよ。

全部知ってるよ・・・。」

私の言葉を遮って

先輩は言った。


その時の先輩の瞳は

真剣そのもので

力強いものだった。

そしてまた先輩が口を開いた。

「ごめん。田中が帰ってから

急いで追いかけたから

さっきの

・・・全部見ちゃったんだ。」

私は、何も言えず

先輩を見つめていた。

すると先輩が

「全部知ってる。

でもその上で

俺と付き合って欲しい!

今は、違う人をみてたっていい。

田中の悲しみを

少しでもいいから

俺にも背負わせて欲しい!

どんな形であれ


側にいたいんだ・・・!」っと言った。

その言葉を聞くと

自然と涙が溢れてきた。


私の居場所は・・・?

そんな出口のないトンネルに

光が見えた気がした。


涙を流す私を

先輩が抱きしめる。

優斗とは違って

力強く私を抱きしめた。

今の私には

その力強さが

とても心地よかった。


先輩が私を離し

「家まで送る!」っと言ってくれた。

申し出に戸惑う私の手を

引っ張り、

先輩は、歩き始めた。


何でだろ?

今日初めてちゃんと話したのに

先輩に触れてると

安心する・・・。

これが居場所があるってことなのかな?

先輩が私の居場所なのかな?


すると先輩がいきなり立ち止まった。

私は、首を傾げる。

すると先輩が

「田中ん家ってどこ?」っと頭をかきながら

私に尋ねる。

知らずに歩いていたのかっと思うと

可笑しくて笑ってしまった。

それから家までは

先輩と楽しくおしゃべりをして帰った。

家に着くと

先輩は、手を振り帰っていった。

私は、先輩の背中を見つめていた。

先輩の背中が

どんどん離れて

ちっちゃくなるにつれて

さっきまで一緒にいた温もりが

寂しさに変わっていくのを感じた。


私・・・、先輩と一緒にいたい!

気がつくと

そう考えている自分がいた。


私は、走りだした。

先輩の背中を

目指して・・・。


あともう少し。

・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

私は、先輩の背中に抱きついた。


私の居場所




見つけた!!


ずっと一緒にいたい。

この温もりと。

先輩と。

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