《MUMEI》 春山村亜子 みんなより少し遅れて、 あたしは今日から高校生になります。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー あたしが今日から通う城都学園の入学式は 桜の蕾が張り裂けそうな頃、4月の始めの週にあった。 今は4月の終わり頃。 昔から病弱なあたしは 入学式に参加することができなかった。 もちろん、学校の中に入っても 場所などわからないもので…。 ましてや自分のクラスさえも知らない。 とりあえず職員室に行こうと考え、 それらしい部屋を探していくが……。 さっぱりわからない。 まず広すぎて自分がどこにいるのかさえもわからない。 どうしようもなくうろうろしていると 「お前山村か??」 と後ろから聞かれ、振り返って見ると いかにもスポーツマンです と言っているような日焼けをした顔が見えた。 「そうですけど…。」 あたしが答えると 小麦色の肌と対照的な白い歯を見せて笑った。 「よかったよかった!!今日が初登校だな!!俺は山村の担任の長谷川だ!!ちなみに1年B組だぞ!!よろしくな!!」 「よろしくお願いします。」 あたしは頭をぺこりと下げて言った。 「クラスメイトも早くお前に会いたいだろうからこのまま教室いくぞ。もうすぐSHR始まるし!!」 長谷川はそう言って歩き出した。 あたしはおいていかれないように走った。 クラスに着いたのか、長谷川は急に立ち止まって あたしの方を向いた。 「俺がいいって言うまで入ってくるなよ!!」 また顔に合わない白い歯を覗かせて笑って言った。 「はい。」 あたしが返事をすると、 長谷川は満足そうに教室に入って行った。 もし友達できなかったらどうしよう。 今頃入学とかおかしいよね。 理由聞かれるかな。 とか、そんな心配ばっかりしてた。 それから少し待っていると 教室の中からざわめきが起こり、 「入っていいぞ」 という長谷川の声が聞こえた。 地味に緊張。 あたしは意を決してドアを開けた。 がらっ …………。 シーーーーーン。 やばいやばいやばいやばい…。 と心で繰り返しながら 長谷川の隣に行った。 みんなはじっとあたしを見てる。 ひとつ深呼吸する。 「本当は皆さんと同じ時期に入学する予定だった 山村亜子です。 訳あって一ヶ月ほど遅れましたが、よろしくお願いします。」 そしてぺこりと頭をさげる。 その瞬間…。 「「かーわーいーーーーー/////」」 「「亜子ちゃん声震えてるーー♪♪;」」 「「やべータイプー////」」 クラスが急に騒ぎ出した。 戸惑うあたし。 なにこれ。 全然心配しなくて平気だ。 あたしは内心すごい安堵した。 ほんとによかったぁあ。 「はーーいみんな静かにー!! 山村がびっくりしてるだろー!!」 長谷川は手をパンパン叩いてクラスを静まらせた。 |
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