《MUMEI》 君が好き。で何かお話を。出会いは最悪のチャラ男。初っぱなから僕の地雷を踏んだ。 『なぁなぁ、お前超〜綺麗じゃん!』 振り向けば、へらへらと笑う金髪にピアス開け放題の男。 …僕と真逆。絶対お近づきになりたくないタイプ。 なのに…それから毎日絡まれる日々。 『加賀美〜超好き』 『すっげ、タイプ』 『なぁなぁ、俺と付き合って?』 いつの間にか、僕の友達と仲良くなってて、ちゃっかり昼御飯まで一緒の始末。 その内飽きるんだろうとタカを括ってたら、しぶとくて… どんなに冷たく突き放しても、無視しても、次の日にはケロリとしてコクりにやって来る。 春夏秋冬を一巡りして再び巡り来る春のある日。学校からの帰り道。 『なぁなぁ、やっぱお前が好き。お前は俺の事好き?』 いつもの軽いノリじゃなく、少し顔を歪めて懇願するような告白。 『なん…?』 いつもと調子が違って、冷たく言い放せないのは、この一年間で、僕は彼が嫌いで無くなっていたから。 でも今更、素直に頷くには勇気がいった。そこで、ふと思い付く。明日は、彼の誕生日だった。 『明日……』 『え?』 『明日答える』 『明日?本当?』 コクリと頷けば、満面の笑み。 『なぁなぁ、それって良い返事だよなっ?』 『…明日まで待て』 うん!と頷き、別れ道に手を振り駆け出す彼の後ろ姿を暫く見ていた。 一瞬、夕陽に照らされた金髪の彼の姿が消えたように見えた。 『え?』 もう一度、見直せば走り去る背中が小さく見えた。見間違いだと安堵する。 …それが別れの時だったと気付かずに… 次の朝、彼の訃報を聞いた僕は、泣く事もなく…『あぁ、そう』とだけ言ったらしく、周りから冷たい奴だと暫く言われた。 通夜、葬儀に参列したが記憶になかった。人は、悲しみが深いと泣く事も出来ないと初めて知った。 皆が日常に戻ったが、僕には日常がこない。彼の居ない世界は、モノクロの世界。 学校からの帰り道、あの日の彼の告白場所で足が止まる。 『君が好き』 …呟いてみる。 受けとる相手の居ない僕の告白は、カラカラに渇いた風に浚われていった。 ……………………… 切ない話ですみませんm(__)m 前へ |次へ |
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