《MUMEI》

「木下ってこんなに体弱かったっけ?」
東屋から素朴な疑問。


「爺さんが早死にで、兄貴は生れつき器官弱くて家系は丈夫な方ではなかったけど。家族内では俺が1番大きな病貰ったことなかったって自慢だったんだけどなー」


「でも風邪とかは昔からちょいちょい貰ってたよな」
七生余計な事を。


「内館壕の中でも心配してたぞ」


「ちげーよ、シゲ!」
バス内で七生が席を立つ。


「移動中は座れ馬鹿!」
背中を引っ張り席に戻す。




そういや、昔寝込んでは七生や乙矢が見舞いに来た。
太郎兄に掛きりだった母が俺を見てくれたのは体調崩したときくらいだったから付きっきりの看病が嬉しかった。



太郎兄の発作と俺のおたふく風邪が被ったときは婆ちゃんが来てくれてて……

少しだけ母さんを太郎兄に取られた気がした。誰のものでもないのに。
寂しさを紛らわしたのはいつも七生達との話。




「また気分悪いのか?」
またなんか考えてしまってた。七生に聞かれる。
直視しにくい、どうも感傷的になってしまいのがいけないな。


「酔い止め飲んでるから。」
余計な心配だ。


どうしてこう、余計なものばかりなのだろう。

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