《MUMEI》

「…好きな人、ですか?」
「そ、
いつも優しくて、
可愛くて、
頼りになる、
お姉さん想いの女の子」
…まさかと思うが、私のことだろうか?
「あの…」
「でもね…その娘は死んじゃったの
三年前にね」
いや…、これは先輩の妹さんの話だ。
「今まで意識しないようにしてた…
でも、もうダメ…
この前の告白で、私は翼ちゃんのことが本当に好きだと分かっとしまった…」
「……」
「でも、多分、私は、翼ちゃんを直接愛せない
だって、今でさえ、翼ちゃんに『ツバサ』を重ねて見てしまうもの…」
つまり、私を通して『ツバサ』…妹さんを見ている、ということか。
「…だから、ごめんなさい
私は翼ちゃんと今以上に近づくには心が汚いから…
…それに、今は一応、彼氏もいるしね」
「そう…ですか…」
ポツポツと、スカートの上に染みができる。
…あれ……私…泣いて……。
「…大丈夫、
近くは無くても、私はずっとついてるから」
先輩は、また、いつかのように、私を抱き締めてくれた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫