《MUMEI》

海に行ったらまずやるのが、埋め合いっこ。

砂浜の砂で、体を埋めて遊んでた。

夏の海であたし達はサウナ状態。

熱中症になりかけて、あたしが言った。

『圭ちゃん、これ以上やったら死んじゃうよ?』

あの時はまだ、リアルな「死」を知らなかった。

幸せだった。

『そうだね、そろそろ出ないと時間なくなっちゃうね』

圭ちゃんがそう答え、海に入る。

透き通った海水は、すごくきれいで神秘的だった。

嫌なことも、忘れられた。

家に帰ればお刺身があって、よく圭ちゃんと圭ちゃんと一緒に食べた。

そのあと、スイカかかき氷を食べて、満足して眠くなったんだ。

でも、夏の日だからクーラーつけてて、寒くて目が覚めたんだよね。

『なっちゃん、お父さんとお母さんは、いないの?』

幼いながらに、あたしは感じ取った。

周りの雰囲気で…。

『いないよ。でも平気。あたし強いもん』

その日あたしは、圭ちゃんの前で初めて涙を流した。

『なっちゃん、なんで泣いてるの?』

なんで泣いてるの?

…あたしには、お父さんとお母さんが、いないから。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫