《MUMEI》
三通目 from You
―――ありがとうございます。
Youさんのおかげで、ほんの少し元気が出たように感じます。
本当はあんなこと、他人に言っていいわけないし、どうしようもないのに………
それと、こんな質問、無意味かもしれませんが、答えて下さい。
あなたは、天候で準えると、何ですか?


翌日にはもう返事は来ていた。
早いなぁ、毎日確認しに来ているのか、と思ったが、今まさに自分がそうだったということを思い出した。
人の事は言えない。
Miwaさんは少しだけでも、元気が出たと言っている。
だけど、何だ。
何だ、この胸騒ぎは。
何だ、この不安は。
所詮、文章なんだ。気持ちを隠すことは容易い。
だが、俺は感じる。Miwaさんの不安を。
この弱々しい文字から感じられるものは一体………
両親が死んだ時の、自分の心情を想像してみる。
最初はただ、悲しい。寂しい。それだけだった。
だが、その奥には、魔物がいる。
名前がわからないような感情が身体の中を縦横無尽に暴れまわる。
胃の中にあるものが、食道を通じて込み上がってくる。
それを必死に耐える。そして、思う。
これが、《負》
ほんの短時間の想像で、負の感情に全てをなだれ込まれそうになった。
Miwaさんはこれを………永遠に背負って生きていかなければならない。
いや、これの何倍もの負の感情だ。
元気が出たと感じた?
嘘だ。
そんな簡単に割り切れるなら、こんな文通、する必要がないんだ。
数日前の自分の心情を恥じる。
何を甘っちょろいことで悩んでいる。
救われたいなら、救え。
優しくされたいなら、優しくしろ。
俺は決めた。俺よりもはるかに潰されそうな彼女を、俺は救いたい。
だから俺は、彼女の太陽になる。


―――まずはMiwaさんに謝らなければなりません。
すみませんでした。
あなたの気持ちをいい加減に受け取り、安易に元気を出せ、だなんて、無責任だった。
あなたの気持ちは、そんなものじゃなかった。
失礼を承知で言い切ります。
差し詰め、あなたの心の天候は、嵐のような勢いの、雨天。もしくは、太陽の光を注す隙間も与えない、曇天。
だから俺は、柄でもないし、元引きこもりに何ができるのかわからないけど……
敢えて俺は、太陽になりたいと思った。
あなたの心の雲を、晴らす太陽になろうと思ったんです。
だから、あなたの質問の答えは、晴天です。

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