《MUMEI》
先生受けの話をどうぞ!
放課後、ほぼ日課になった担任間宮との補習を受けるべく、教室へと向かう。

『青木くん、このままじゃ卒業出来ませんよ?僕と補習しましょう!』

春に担任になった、物腰柔らかな若い男は学園の問題児で鼻つまみ者の俺に笑顔で告げた。

『……つっ』
その笑顔と他の教師にはない熱心な態度に不覚にも惚れてしまった俺は、柄にもなく真面目に補習授業を受けている。

と、廊下の曲がり角で担任と誰かの話し声が聞こえる。
そうっと聞き耳を立てれば、もう一人は数学担当の伊崎だと解る。

『間宮先生も問題児の受け持ちで大変ですね、今から補習ですか?』

『はぁ、まぁ』

『まあ、あんな生徒を頑張って卒業させれば、校長に好印象を与えて、出世の道も開けますからね!いやはや先生もちゃっかりしてますね。』

『伊崎先生…』

担任と伊崎は、歩きながら遠ざかっていった。


…聞きたくなかったな。間宮もやっぱ他の教師と変わらないと言う事か。

『ははっ…』
渇いた笑いが口から漏れる。なんの事はない、熱心な態度も我が身可愛さの為。俺は何を期待してたんだろ…。

補習の教室に着いたが、中へ入る事が出来ずにいた。

『青木くん?』

振り向けば、息を弾ませ、頬を紅潮させた間宮。

『はぁっ良かった、僕、遅くなってしまって…』

柔らかな笑顔を俺に向ける。この笑顔の裏側で、さっきの会話のような事を考えているのか、と思ったら…居たたまれなくなった。

『……っせんだよ、この偽善教師がっ!俺はあんたの出世の道具じゃねーんだよ』

暴言を吐き、間宮の横をすり抜けようとした。

『え?ちょっ、青木くん?待って?』

不意にガシリ!と腕を捕まれる。間宮の細い腕の何処にこんな力があるのか?結構強い力で、教室に放り込まれる。

『てめっ、何を』

抵抗して、手を振り回せば…俺の爪が間宮の柔らかな頬を傷付けた。ツッーゥと赤い線が間宮の頬に浮かぶ。罪悪感に動きが止まる俺に、間宮が静かに話かける。

『青木くん。もしかして、僕と伊崎先生の話を聞いてたんですね?』

『……』
無言で睨めば、はあっと息を吐き困った表情を浮かべた。

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