《MUMEI》
from Miwa
…………………え?
昨日、外出も可能なほど健康なため、退院を許可され、その翌日、つまり今日退院した。
その帰りに公園に寄り、案の定返事はあった。
流し読みすると、第一声が冒頭のものだった。
Youさんに、見抜かれている。
やっぱり、彼は私と一緒だ。
心の闇を知っている。
この元引きこもりというのが、関係しているのだろうか。
最近になって、大気中の塵を元に発生し、増殖し続ける雲のような闇を抱えてしまうようになった、私と。
昔から、心の闇を抱え込んでいる、彼とは。
どちらの方が、不幸なんだろう。
この文章を読んでいる内に、私は少し笑えた。
何だろう、これ。
書き慣れていない。感情を表に出すのが、相当に、へたくそだ。
ものすごい、クサい。
それ故に、彼が必死に文章で何かを訴えようとしていることが分かる。
多分、私のことを励ましている。
こんな薄幸な私を、激励している。
そんな気持ちに、私は心を討たれる。
笑えるんじゃないか、私は。
もう出逢う事が無いと思い込んでいた感情に、私は巡り逢えた。
彼のおかげだ。
だけど。
これだけの情を受けているのに、何万層にも重なる私の雲は、微動だにしていない。
百キログラムの闇に対して、一キログラムの光を天秤に掛けたって、結果は変わらない。
うっすらと浮かべていた笑顔は、消えていた。
心の中は、黒い絵の具で重ねるように塗り潰された。
心の中は、闇で埋め尽くされた。
心の中は、虚無。
心の中にあった、Youさんの激励は、消えてしまった。
もうこの手紙を書き続けることすらも、できない。
オルゴールの音色が止まったことにすら、気付かない。
そして、手紙を、引き裂いた。
これで、終わった。
涸れたと思っていた涙は、溢れ出る。
もう二度と、この文通は相手には届かない。
こうして私は、最期の希望を失った。
絶望する。
私は もう 生きる 理由が 無い
偶然 にも 目の前 には 池が ある
私は生気を失ったような歩調で、池に近付く。
走馬灯じゃないけれど、今までの記憶が蘇る。
さようなら
今までの私は、幸せでした
最期の私は、不幸でした
深い深い池へと身を差し出す、最初の一歩を開始した。
その刹那。
私は左手を掴まれた。
振り向くと、そこには息を荒くさせた青年がいた。
息を整え、メガネのレンズ越しから、私の目をジッと見て、言った。


「やっと………見つけたよ。Miwaさん」

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