《MUMEI》 from You俺は、彼女の太陽になる。 そう決意した日、俺はまず、Miwaさんに会おうと思った。 所詮、文章だ。伝えられることには限度がある。 だから、直接会おうと思った。 まあ所詮、俺、っていう解釈もできる。俺と会って何が変わるかはわからない。保証なんかできない。 俺のできることは少ない。少ないけど、確かにできることはある。 逆を言えば、俺と会って、何かが変わるかもしれないんだ。 世界中の人間が集まった部屋で、たった一人の人間を探し当てるような、そんな微かな可能性でも、俺は諦めない。 そう意気込み、俺はベッドから起き上がる。 一日が遅く感じる。 明日、会いに行くと決めてから、とにかくそう感じる。 何故だ。 ちなみに、出逢う方法は、待ち伏せだ。 まるでストーカー………いや、そのものだが、Miwaさんがいつ現れるか分からない以上、仕方がない。 Miwaさんが早起きさんだったらどうする。遅刻は許されない。 時刻は午後十時二十分。いつもなら寝始めるには早すぎる。 一瞬躊躇う。だが、すぐに思い直す。 遅刻は許されない。 パソコンへと伸びた右手を、左手で抑える。 今起動させれば、寝れる気は、全然しない。 灯りを消し、部屋を暗くする。だが、ダメだ。視力が良くて、しかも夜目も効く俺には目眩ましなんて通用しない。 眠れ眠れ眠れ眠れ眠れ眠れ、と念じながら毛布に丸まる。 こんなことを念じながら眠ることが、ひどく懐かしく感じた。 翌日、起床したのは、朝の七時半を過ぎた頃だった。 寝過ごした。五時頃に起きるつもりだったのに。 浅いため息を零し、着替え始める。制服ではなく、私服へ。 朝から家を出ることは、引きこもってから十回に満たないくらいしかない。 だが、部屋の前には、母親が毎日欠かさずに朝食と現金を置いている。 何も感じなかった。 雪のように冷たく、しらけた感情しか生まれなかった。 作業のように、いつも通りにそれらを拾い上げた。 オルゴールの置いてある公園を目指して、家を出た。 どうせ寝過ごすなら、もう少し遅くてもよかった。 通学時間とかぶり、通学路には学生がうじゃうじゃといた。 感情が冷める。だけど仕方がない。 その列に、混じる。 「待って」 聞いたことのある声 いや、聞き慣れた声 ダメだ 振り返るな やめろ やめろ 「………楔」 「久し振り、悠」 前へ |次へ |
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