《MUMEI》

「先生よー、タバコを一本貰えねーか?」
画面は背中を向けた進一郎に向かい、
椅子にだらしなく腰かけた男の姿を、
正面から捉えている。
二人の間にある机上にパソコンと電子機器のような物が置いてあり、電子機器からは無数の配線が延びて、その先端部は男の裸の上半身にテープで止められていた。
不意に画面が二分割されると、男の姿は左側に追いやられ、右半分にはパソコンのモニターが映しだされた。
パソコンに映るのは人体の輪郭らしき物で、人体の内部では無数の光点が星のように輝いている。
こちらに背中を向けた進一郎が、男にタバコを一本渡し、次に火を灯したライターをそのタバコの先にちかづけた・・・・、その瞬間・・・・男の右手がライターを持つ進一郎の腕を掴んだ。
「何をする!!」
進一郎の抗議の声を無視して、男は自らの左腕にライターの火を近付けていく。
ニヤニヤ笑う男の顔も、さすがに火に腕を炙−あぶ−られた瞬間には苦痛に歪む。
「イカれてる!」
呆気にとられる進一郎に向かい、皮が めくれかえり赤い肉が露出した腕を晒しながら、
「まあ見てな・・・・」
涼しい顔で男が告げた。
まるでCGの映像を見ているように、わずか数十秒で火傷痕は綺麗さっぱり消えてなくなった。
そしてパソコンのモニターでは、人体内部に均等に広がっていた光点が、左腕に移動密集していく。
その光点の動きは、どうやら体内のナノマシーンの存在を捉えているらしい。
「どんなもんだい!」
男は得意げにタバコを吸うと、鼻と・
・・・首筋の鰓−えら−から 白い煙を吐き出した。

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