《MUMEI》
from Miwa
彼は、今、何て言ったんだろう。
彼の言葉に、頭が、脳が、理解しなかった。
「わからない。そんな顔をしてるな」
いや、したくなかったのかもしれない。
隠す気のない歪んだ笑みを浮かべ、彼は近付く。反射的に私は彼から遠ざかる。
「俺には昔から、人とは少し変わったところで快楽を感じることがあってよ。極端な話、男でもいいんだが、やっぱり女が最高だよな」
何を………そう言う前に、彼は答えた。
「俺はね。他人の不幸を見るのが、興奮するほど、死ぬほど大好きなんだ」
そう答えた瞬間、彼は私の口を塞いだ。
あまりのことに悲鳴を上げる。が、出なかった。
頬骨を握力で圧し、声は涸れたような低いものしか出なかった。
これでは、誰の耳に届くはずが、ない。
そのまま私をベンチに押し倒す。
涙は出る。声は出ない。涙だけでは、助けは来ない。
「俺は他人の不幸が好きで好きで堪らないんだ。最近まで付き合っていた女は、顔や体は良いが、過去が無かった。俺を興奮させてくれる程の不幸がね!」
言葉を理解しても、意味は理解できなかった。
他人の不幸を喜び、嘲笑い、更に傷を与える。
そんな人間が、目の前に、いる。
それが、Youさんの、正体。
私を励まし、必ず救うと言ってくれた、気になる男の人………
嘘だと、言ってほしい
オルゴールの音が、哀しげに奏でる。
まるで、今の私の心情を奏でているようだった。
この世は、非情だ
制服の両腕の袖が破られる。一度も男の子に見せた事の無かった肌が、露出される。
彼は興奮したように、顔が更に歪む。
今、彼がしようとしている事は、想像できた。
授業で習った程度の知識しか、分からない。
そのため、興味は、湧かない。
彼に、奪われる。
この段階で既に、痛い、辛い、怖い、怖い―――
嫌だ
嫌だよ
恥ずかしがる暇も与えられない。
恐怖しかない。
怖い
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い






そして、私は………

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