《MUMEI》
from You
発狂する。
周りは俺達を怪しげに見て、あからさまに避けて通行する。
「一体……どうしたの?」
楔は眉を顰めながら尋ねる。
言ってはならない事を、お前は言ったんだ。
俺は楔を力強く抱き締めた。
楔はビクン、と身を硬直させた。
「お前が………好きだっ!」
それは、確信だった。
俺の気持ちを、楔に向けて、叫んだ。
「どんなに辛くても……どんなに不幸でも!お前を想っていれば、それで幸福だった!昔からそうだった!」
「悠………」
抱き締める力は強まる。楔も俺の体を腕で覆う。
「でも……でも!あの時……お前は竣吾が好きで!それを、それを俺に伝えて!協力してくれって!どれだけ苦しかったか!わかるか!?」
小学校を卒業し、俺はその日に楔に告白しようと勇気を振り絞り、楔と一緒に帰った。
だが、その告白は、結局告げられずに終わる。
『私、竣吾くんが好きなの!おねがい、協力してくれない?』
絶望した
竣吾とは特別仲が良かったわけじゃない。だが、男友達で遊ぶ時に一緒になって遊んでいた。それを、楔は勘違いした。
言葉を失い、俺は………頷く事ができなかった
その一年後、楔は俺の協力を一切必要とせずに、竣吾と交際した。
「俺がどれだけ苦しかったか!わかるか!?」
同じ言葉を、繰り返す。
「悠………」
楔は、哀しげな表情を浮かべる。
「今からでも、遅くないかな?」
「ッ!」
今の楔の言葉の意味を、理解した。
「悠がまだ、私の事を想っているなら、私は………いいよ」
そっと微笑む。
俺は楔の事が好きだ
それに竣吾とは続かないと思っていた。あいつが本性を現したら、きっとこうなるだろうと予想、いや、妄想していた。
だけど、今は竣吾の事は関係ない。
俺は………楔の事が、好きだ










それ故に、俺は、楔に嘘を憑けない










俺は楔を引き離した。
「………どうしたの?」
眉を寄せる。
「俺はお前の事が好きだ。多分、その気持ちは一生変わらない」
俯いたまま、話す。楔の顔を直視する事が、できない。
「だったら、なんなの?」
責める、問い詰めるように聞く。
俺は楔に嘘は憑けない。それがたとえ………楔を傷付ける事になっても
だから
言わなければならない
辛い
苦しい
言え
言え!







「それでも、俺は楔とは付き合えない」

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