《MUMEI》

「やはり君は鬱症状なのだ。GODグループに在籍している優秀な精神科医を、さっそくこの地母製薬の研究所に
派遣させよう」
「大変ありがたい申し出だが先生、医者に見て貰わなくても、原因はこの俺が
一番よくわかっている。そしてこればっかりは医者も解決出来ないと言う事もな・・・・」
「一体それはどういう事だね?」
「なーに、簡単に言うと昔ながら人間が持っている狩猟本能ってやつですよ」
男の満面に不気味なニヤニヤ笑いが広がる。
「ナノマシンは肉体の病は治してくれたが、どうやら『ここ』の・・・・」
と言いながら、自分の頭をコツコツと
指先で叩いた。
「病気は治してくれなかったらしい。
いや、それどころか日に日に衝動は強くなる一方だ」
「衝動とは?」
進一郎が興味深そうに尋ねた。
「きっとナノマシンは俺の頭の中身をいじくっているに違いねえ。そして容赦なく引きずり出そうとする!」
「だから何を?!」
「この俺自身をだよ!!殺人鬼である
この俺!本当の俺をだよ!!」
画面に向かってつきだされアップになった男の顔。
その瞳がチラチラと不規則な赤い光を放ち明滅している。
それは男の体内に巣くう、ナノマシンの 活動を示す証しなのか?

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