《MUMEI》
じらす。
目覚めると、手足をベッドに縛られていた。
「…………なにこれ」
昨晩は千雨が泊まりに来た日だ。つまり、犯人、ホシは千雨だ。
だけど、こんな事をする意味が分からない。
「あ、先輩。起きたんだ」
「起きたんだ、じゃなくて………って、何で下着姿!?」
パジャマだったはずだ。色気皆無の。
「よく見たら僕もパンツ一丁じゃないか!」
今更気付く。何故か違和感がない。
「千雨?僕を縛って、一体どうするつもりだい?」
「先輩を、男にします」
つぶやくように答える。
「先輩はいつも、私が誘うようにしないと、先輩は私に何にも手を出さないですよね。それが許せないんです」
千雨は頬を膨らませる。可愛い。
「たまには男らしく襲うってこともしないと先輩の将来が心配です」
まさか年下の女の子に将来を心配されるなんて……。
それはそれで屈辱だ。
「………で、それで何で俺を拘束する理由になるって言うんだい?」
縛られちゃ襲うなんて不可能だ。これはどう見たって、逆だ。
「先輩を、男にします。だから、先輩をこれでもかってくらい、じらしまくります」
「…………え」
呆気に取られる僕に顔を近付かせ、いきなりキスをした。
しかも、僕の口内に舌を入れる。
文字通り、舐め回す。
「……ん。……ぅん」
僕は退くことができない。
千雨が満足するまで、キスは続く。

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