《MUMEI》

「富岡って、かわいーよな。」
東屋が話し掛けてきた。


「何、唐突に」


「見てた。二人のことを。」
富岡と七生のことだ。


「見てたね。気付いてないんだ……」
南も加担する。


「違うから。
東屋こそ、ああいう清楚な子がタイプだったんだ。」


「いいじゃん、守ってあげたくなる。」
守ってあげたいねー……すっかり、七生のやつ好みのタイプ変わったんだ。

俺についてこい!みたいな、姉さん女房が好きだったのに。




物静かで知性に溢れた彼女は七生の何処がいいんだ?

あんな野人、普通の会話もままならないのに。


バス内の蒸し暑さと思考が混じり合ってぐつぐつ頭が煮えそうだ。

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