《MUMEI》

ノブ!、落ち着け!
おい、待て!ノブ!

車に乗り込んだ俺に、竜也が叫んでた

エンジンが吠え、タイヤがアスファルトを焦がす

竜也の屋敷に居るときに、電話が来たんだ

くそっ、遅っせーな、この車!

メーターは、280キロを表してた

ハイビームのまま、高速を北上してた
地元に向け

電話が鳴った、伊藤弁護士からだ

はい

簡単に情況を説明します
まち子さんと娘さんは無事救出しました
旦那さんが病院に搬送されてます
約束通り、妹さん達は解放されましたが、アカネさんのお母様が手術中です

わかった、
すまないが、皆を頼みます

はい、あ、まち子さん!

ごめんなさい!
ノブ、私、わたし

怪我してないか?、まち子

私が油断したから…

まち子、後を頼む

ノブ!

指揮をとれ、うろたえるな
わかったな

わたし、私は…

姉さん、頼んだよ
判断は任せる

そうはなしたとき
追い越し様に、トラックにミラーが触れたのか
激しい音をたて、吹き飛んだんだ

電話を切った

まち子が無事なら、なんとでもなる
良かった、まち子の子供を狙うとは……
無事で、良かった………

………車を停めたのは、地元の旧街道にある、潰れたドライブインだった

オイルの焦げる臭いがしてた

………男が、出てきた

お早い到着ですなぁ、神谷さん

電話の主に会わせてもらおうか

こちらですよ、どうぞ

薄笑いを浮かべて、そう言った男は
竜也の側近だ

顔を見たことがある

……………

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