《MUMEI》
有名小説の冒頭文を使って書き出しを。
“国境の長いトンネルを抜けると雪国だった”

読書感想文を書く為に読んだ川端康成の『雪国』の冒頭文が頭に浮かんで来る。

半ば強引に拉致られた形で夜行に乗せられた車窓に開ける光景。


『な?綺麗だろ?和宏(カズヒロ)に見せたかったんだ』

俺の隣で満足そうに笑う智輝(トモキ)の横顔を恨めしそうに見詰め呟く。


『…けど、やっぱ寒い』


極度の寒がりな俺は、雪国に旅行に行こうと言う智輝の誘いを断り続けていたのだ。しかし、今こうして、智輝の故郷の雪深い温泉宿に連れて来られていた。


俺の呟きに、フッと笑い隣に座り肩を抱き寄せる。

『寒いから良いんだろ?ほら、こうしていられるから…』

『……つっ』

近くに智輝の体温を感じ恥ずかしさで、息苦しくなる。いつまでも慣れずにドキマギしてしまう。


『和宏、顔真っ赤』

『う、うっせっ…』

ぎゅっと手を握られる。


『ふふっ、久しぶりに和宏の手を握れたな』

『うっ…』

旅の目的だったと、智輝が言った。一個目は綺麗な雪景色を見せる事、でもう一個は…俺とスキンシップを図る事だと…。


照れ屋で人目を気にしい、な俺。だから普段は極力スキンシップを拒んでいた。我慢させてたのか…。今更に罪悪感が沸く。

『お、俺なんかの手を握って…嬉しいのかよ?』


『恋人の手を握れて…嬉しくないヤツが居ると思うのか?』

当たり前の事を聞くなとたしなめられる。


『…わ、悪かったな』

『そんなとこも、可愛いと思えるから…』

大丈夫だ、と笑う。


外は雪…しんしんと静かに降り積もる。

今夜は、智輝に思う存分甘えて擦り寄ってみようかな、などとらしくない考えさえ思い浮かぶのは…雪国マジックのせいなんだろうか?


おしまい


***********

有名小説の冒頭文は、これと、坊っちゃんしか思い付きませんでした(笑)

お粗末さまでした。読んでいただきありがとうございましたm(__)m

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