《MUMEI》 5話「ふう」 暁はその背を見送り、息を吐く。 「大丈夫か、御咲」 暁は振り返った。 同時に、ビクリと動きを止める。 後ろにいた御咲は、またしても冷たい瞳になっていた。 「みさ...き?」 「やっぱり、君だったんだね?そうじゃなければ良かったのに...」 「何言って...」 「神の手使い(ゴッドハンダー)」 「!?」 反射的に、暁は後ろに飛び、御咲と距離をとる。 「その反応だと、あたりみたいね。すべてを元に戻す能力、神の手(ゴッドハンド)。その継承者」 「どうして...」 「できることなら君と戦いたくはなかった」 言って、御咲は目を閉じる。 「朱雀」 御咲が呟いた。 すると、彼女の頭上に炎の鳥が翼を広げて現れる。 「なっ」 炎の鳥、朱雀の翼から、炎の矢がいくつも放たれた。 暁は、とっさに右に跳んでよける。 「何すんだ!?」 「私の使命は、神の手使い(ゴッドハンダー)の抹殺」 「な...に?」 「悪いけど、殺させてもらう」 ドパッと炎の渦が朱雀から飛び出した。 「くっ」 暁は、雷天の杖を握った右手で渦を叩いた。 同時に、渦は跡形もなく消滅する。 「さすが神の手使い(ゴッドハンダー)。一筋縄じゃいかないか。...白虎!」 御咲が言うと、朱雀が消え、白い虎が現れる。 白虎が地面に足を叩きつけた。 瞬間、四方から暁に電撃が襲いかかる。 暁は、雷天の杖を上に向けた。 すると、電撃はすべて杖に集まる。 「俺が電気系能力者だって忘れてねえか?」 暁は告げる。 その目から戸惑いはすでに消えていた。 「そうだった...。なら...」 「させねえよ」 ガキンと、音がした。 それはそこにあったすべての鉄パイプが、御咲の首に向けられた音だ。 「くっ...」 「終わりだ」 ピー 雷天の杖から電子音が鳴った。 カランカランと、鉄パイプが地面に落ちる。 「情けでもかけたつもり?」「電池が...」 二人の声が重なった。 この瞬間に、形勢が逆転する。 前へ |次へ |
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