《MUMEI》

ザァー…………


五月蝿い、流水音に混じって声がする。

「ほら、内館起こした!」
南が扉から顔を出す。


「お前が邪魔するからだろ」

「悪い、寝てていいよ」
南は七生の声を煩わしそうに聞きながら片手を顔まで挙げて詫びの形にしてた。

布団に潜る。
……喉渇いた。


「はい、お茶」
起き上がろうと頭を出したらお茶が飛び込んで来た。

「……有難う」
冷たいペットボトルを七生から受け取る。蓋が緩まっていて簡単に口に運ぶことが出来た。
うま……、血の巡りが良くなる気がする。


「乙矢から。」
流石、分かっていらっしゃる。


「あんまり五月蝿いなら部屋変えるよ?」
南が気を遣ってくれた。


「いや、立ちくらみなんて初めてだし。先生からもなんでもないってお墨付き貰ったんだ。
ただ倒れた場所が悪かっただけだから。
それに、多少五月蝿い方が落ち着くもん。」
子供の時から、賑やかな方が落ち着いた。

病気になっても枕元に七生や乙矢の声が聞こえると早く治したくなって元気になれる気がした。
気持ち良く眠れたんだ。

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