《MUMEI》
一二三
寝過ぎだ。就寝時間に寝れないなんて悪循環ではないか。
他人の寝息が気になる。静かな七生の分南の深い息が繰り返し頭をループした。


冷蔵庫に入った飲みかけのお茶を飲みに行く。

布団に戻る前に安眠用の音楽を用意する。耳にイヤホンを入れたときだった。



「まだ寝てないのか?」
七生の声だ。静かな筈だ起きてるのだから。



「寝たの9時だよ?」
11時に起こされて、堪ったものでない。


「ごめんごめん。」


「本当に思っているんだか。」


「思ったよ。
出来る事なら二郎が倒れてしまう前に側に居れば良かったとか……」


「別に過去の事なんて持ち出さなくていいだろ。富岡と居たなら仕方ないよ」
そうだよ、七生は富岡と居たんだから。


「気になる?」
急な質問だな。


「ええ?いいんでない?」
聞き返してしまった。言葉がすらすらと出てこない。


「富岡の事どう?」


「そりゃ、賢そうな……そう、手が小さいの。見た目全部小さい。
でも凄いしっかりした声を壕で出したね。きっと大人っぽい人なんだ。
それでも富岡を見ていると守ってあげたくなってしまうんじゃないかな。」
後半は東屋から引用。


「……そう。」


「いい人じゃない。」
お前には勿体ないくらいに。

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