《MUMEI》 教室 貝殻 月休日の学校は静かだ。 静かな場所は落ち着かない、という人がいるけど、私にとっては心地よいものだった。 自分の教室に一人で座っている。これが私の習慣だった。 今日も教室は静かだ。 持ち込んだ小説を読む。 ページを捲る音だけが響き、それすらも静寂に呑み込まれる。 まさに、私の至福のときだ。 しかし、今日は予想もしない邪魔者が来た。 「あれぇ、宮藤じゃん どうしたのー?」 クラスメイトの…名前が思い出せない。 貝殻の髪止めをしているのが特徴的だ。 「…別に」 冷たく聴こえてしまったかも知れないが、不愉快なので仕方ない。 「用事も無いのに一人で本読んでたの?」 「…」 「宮藤ってぼっちだったんだね」 「…」 放って置いてくれ。 もうすぐ6時になる。 外も暗くなって来たというのに、クラスメイトの彼女は帰る気配を見せない。 「…帰らないの?」 訊いてみる。 「宮藤と一緒に帰るよ」 いい笑顔で言われた。 本に目を戻す。 すぐそばにクラスメイトがいる。 …落ち着かない。 「…帰る」 「じゃあ、ついてく〜」 外に出ると既に月が出ていた。 「…綺麗」 思わず口に出してしまう。 「確かに、綺麗だね」 横からも同じセリフ聞こえる。 見ると、彼女も私の方を向いて笑っていた。 何故か気恥ずかしくなってしまう。 「明日も来るの?」 「うーん、宮藤は来るの?」 「多分」 「じゃあ来るよ」 嬉しいような、鬱陶しいような…。 「じゃあ、また明日」 「ぁ…あの、」 「何?」 「名前、教えて」 「うーん…秘密♪」 |
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