《MUMEI》
ヤキモチと嫉妬の違い
ガチャン、と2人が出て行ったという合図が今宵の耳に届く。

部屋に取り残された歩雪と今宵。

そして未だ先ほどとは変わらず、今宵は歩雪の腕に捕らえられている。

この状況から分かることは・・・・・・?

今宵はクイズ番組よろしく考える、というか考えたくも無いが頭に浮かんできたことはただ一つ。

『危険』。

秋葉と琴吹くんが言ってたのはこのことだったの!?

でも何でこんな微妙な空気?

漠然とした危険は察知したものの、その理由が分からない。

「んーと・・・・・・歩雪くん?」

今宵は歩雪の顔を見上げてとりあえず話し掛けてみたが、歩雪からはうんともすんとも返事が無い。

め、めげないもん!!

「歩雪くーん?そ、そろそろ離してくれると嬉しいなーなんて♪」

今宵は茶目っ気たっぷりに再び話し掛けてみる。

・・・・・・ダ、ダメなの?

もうよくわかんないよっ!!!

「離さないよ」

「へ?」

突然呟いた歩雪に今宵は聞き取ることが出来ず、気が抜けたような声を発した。

何て言ったの?今。

歩雪は背を向けている今宵の腕を取り、自分の方に向かせた。

そして、先ほどの紘と同じように今宵に顔を近づける。

「ひゃっ!!!何?」

「逃げないで」

驚いた今宵は慌てて顔を逸らそうとするが、歩雪の手がそれを許さない。

今宵の顎に片手を添え、くいっと自分の顔を見上げさせる。

「さっき何であんなことされて黙ってたの?」

「っ黙ってなんか・・・・・・」

ない、と続けようとしたが、歩雪の今までに見たことも無いような鋭い目線に黙らされた。

何か、いつもと違う・・・・・・。

こんな歩雪くん見た事無い。

「強引に突き放すことだってできたでしょ?どうしてすぐにしなかったの?」

「だ、だって琴吹くんのことだからすぐに冗談だって戻ると思って・・・・・・
!!」

「いくら相手が紘で冗談だって言っても、オレはこーにあんなことされて黙ってられるほど大人じゃないよ」

「歩雪くん・・・・・・?」

今宵は歩雪から目を逸らすことができず、真っ直ぐに見つめる歩雪に戸惑った。

「オレが何年こんな思いしてきたと思ってるの?無防備に男を近づけてるこーを見て」

「ひゃっ」

歩雪は更にずいっと顔を近づけてくる。

もう、歩雪の瞳の中に今宵の姿が見えるほどに。

「やっと捕まえたんだ。離してなんかあげないよ、こー」

「やっ・・・・・・」

歩雪の顔がもうくっ付きそうなほど迫ってくる。

今宵は思わず目を瞑った。

やっぱおかしいよ、歩雪くん・・・・・・!!

何か知らない人みたい!!

今宵の心臓の音が部屋全体に響き渡りそうなほど響く。

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