《MUMEI》

バキッ!!と音が鳴り、ドアに裂け目が走る。
ドア枠のネジが二三本外れ、床を転がっていく。
襲いかかる受難に耐えながらドアを押さえつける須佐男の顔は蒼白となって、
冷たい汗が幾筋も流れ落ちた。
「おらあ!開けろーー!」
するとドアを押さえる須佐男の手の甲に、聖痕のように火傷−やけど−の跡が点々と浮かびあがってきた。

『お前の根性を鍛えてやる・・・・』
にやにや笑いながら、タバコの火口を
須佐男の手の甲に押しつける、右の耳たぶに金色のピアスをした男。
鮮明なイメージが須佐男の記憶の中から、火傷と呼応するように浮かびあがった。
「・・・・のヤロー・・・・」
ギリギリと歯を噛みしめた須佐男の喉奥から、絞り出すように微かな呻きが漏れた。

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